2026/01/29
マウスピース矯正の素材と安全性について
― 科学的根拠に基づく当院の考え方 ―
マウスピース矯正で使用される装置は、主に医療用の熱可塑性樹脂(PET-G、ポリウレタン系、多層構造材料など)から作られています。これらの素材は、透明性・弾性・耐久性を考慮して開発され、世界中で長年にわたり臨床使用されてきました。
一方で近年、これらの素材について
「化学物質の溶出」
「生体への影響(生体適合性)」
といった観点から、複数の基礎研究やレビュー論文が報告されています。
当院では、こうした研究動向も踏まえたうえで、患者様に説明責任を果たすことを重視しています。
研究で指摘されている主な論点
1.化学物質(BPA等)の溶出について[1][2]
一部の研究では、人工唾液や加温条件下において、マウスピース材料からごく微量の化学物質(例:BPA)が検出される可能性が報告されています。
ただし、これらの研究の多くは実験室環境(in vitro)で行われたものであり、実際の口腔内環境(唾液量、飲食、着脱、清掃、使用期間など)を完全に再現したものではありません。
また、報告されている溶出量は、一般的な安全基準を大きく下回るレベルであるケースが多いとされています。
現時点では、マウスピース矯正の使用によって、全身的な健康被害が生じたとする明確な臨床エビデンスは限定的です。
2.細胞レベルでの生体反応(細胞毒性)[3][4]
歯肉線維芽細胞や歯根膜細胞を用いた研究では、素材の種類や製造工程の違いにより、細胞反応に差がみられる可能性が示唆されています。
特に、
- 熱成形条件
- 多層構造か単層構造か
- 3Dプリント材料における後硬化(post-curing)条件
などが、生体適合性に影響する可能性があると報告されています。
ただし、これらの結果も臨床環境で同様の影響が生じることを直接示すものではありません。
当院の考え方と取り組み
当院では、「マウスピース矯正は安全」「問題がある」といった単純な結論で捉えるのではなく、
- 素材の特性
- 研究結果の限界
- 臨床での使用実績
を総合的に評価することが重要だと考えています。
そのうえで、
- 長期的な臨床実績のある素材を優先的に採用
- 患者様の体質・アレルギー歴の確認
- 適切な装着時間・使用方法の指導
- 不安や疑問に対する十分な説明
を行い、安全性と治療効果のバランスを重視した治療を提供しています。
患者様へ
マウスピース矯正は、「何も考えなくてよい治療」でも「危険だから避けるべき治療」でもありません。
大切なのは、素材の特性や研究状況を理解したうえで、適切に管理された治療が行われているかどうかです。
当院では、現時点で分かっていること・分かっていないことも含め、誠実にご説明したうえで治療を進めてまいります。
参考文献・引用論文
[1] Peter E, et al. (2023)
Bisphenol-A release from thermoplastic clear aligner materials: A systematic review.
Journal of Orthodontics
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36922722/
[2] Yazdi FM, et al. (2023)
A systematic review of biocompatibility and safety of orthodontic clear aligners and thermoplastic retainers.
Dental Research Journal
https://www.researchgate.net/publication/363800578
[3] Martina S, et al. (2019)
In vitro cytotoxicity of different thermoplastic materials for clear aligners.
Angle Orthodontist
[4] Bor T, et al. (2025)
Post-process cytotoxicity of resins used for clear aligners.
Polymers (MDPI)
[5] Mallik S, et al. (2025)
Evaluating the Biological Effects of Bisphenol A Leaching During Clear Aligner Therapy: An Umbrella Review.
Cureus
https://pdfs.semanticscholar.org/bc61/80c78922f8b105068965000adce1bb8f1c34.pdf
※ 研究結果の解釈について(重要な補足)
本ページで引用している研究の多くは、実験室環境(in vitro)における検討です。これらは素材の性質を評価する重要な基礎研究である一方、臨床環境での健康影響を直接示すものではありません。
複数の系統的レビューにおいても、in vitro 研究の結果をそのまま臨床に当てはめることはできない、
という点が繰り返し指摘されています[1][2][5]。
当院の立場
当院では、
- 「安全である」と断定すること
- 「危険である」と過度に不安を煽ること
のいずれも行いません。
現時点の科学的知見を踏まえ、素材・製造工程・治療管理を総合的に評価した臨床判断を行っています。
当院が安価なマウスピース矯正(低価格アライナー)を採用しない理由
近年、マウスピース矯正は広く普及し、非常に低価格をうたう矯正サービスも見られるようになりました。
当院では、価格を最優先としたマウスピース矯正は採用していません。
その理由を、素材・製造工程・治療管理の観点からご説明します。
1.使用される素材の違い
低価格アライナーでは、使用素材の詳細が十分に開示されていない場合や、長期的な臨床実績が限られている素材が用いられることがあります。
当院では、特性が把握され、臨床実績のある素材を優先しています。
2.製造工程の違い
マウスピースは、熱成形条件や後処理工程によって、精度や再現性が左右されます。
工程を簡略化した場合、品質にばらつきが生じる可能性があります。
3.治療設計・管理体制の違い
マウスピース矯正は、治療計画の立案から治療中の調整まで、矯正歯科医による継続的な管理が不可欠です。
当院の考え方
当院では、安全性と治療の確実性を両立するため、一定の品質基準を満たすシステムのみを採用しています。
マウスピース矯正の費用について
| 矯正相談 | 無料 | ||
|---|---|---|---|
| 精密検査・診断 | 50,000円 | ||
| 動的治療 | 子どもの場合 | 380,000円~ | |
| 大人の場合 | ラビアル矯正 | 680,000円~ | |
| リンガル矯正 | 1,200,000円~ | ||
| マウスピース装置 | 900,000円~ | ||
| 調整料 | 大人 | 4,000円 | |
| 小児 | 2,000円 | ||
| インビザライン | 3,000円 | ||
| 舌側 | 5,000円 | ||
※当院では、使用する素材・製造工程・治療管理を重視し、一定の品質基準を満たすマウスピース矯正のみを採用しています。詳しくは 「当院が安価なマウスピース矯正を採用しない理由」 をご覧ください。
よくある質問
Q. 安いマウスピース矯正と、こちらの矯正治療は何が違うのですか?
A.
マウスピース矯正の違いは、価格そのものではなく、
- 使用される素材
- マウスピースの製造工程
- 治療設計と管理体制
にあります。
当院では、素材や工程、治療管理まで含めて総合的に判断し、一定の品質基準を満たす矯正治療のみを行っています。
初診相談のご案内
※矯正治療は価格だけで決めるものではありません。
当院では、素材・製造工程・治療管理まで含めて丁寧にご説明したうえで、無理に治療をおすすめすることはありません。
監修歯科医師

日本矯正歯科学会 認定医
渡邉 司理(ワタナベ モトリ)
専門
歯科矯正
卒業大学
鶴見大学歯科学部卒業/日本大学歯学部大学院歯学博士
資格
歯学博士/日本矯正歯科学会認定医
所属
日本矯正歯科学会/東京矯正歯科学会/日本大学歯学部附属病院歯科矯正在籍/(医)CosmeDentalConcept理事
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